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本を読んで、自分用にメモしたいいなと思った文章をこちらでシェアします。
『英国シューマッハー校サティシュ先生の最高の人生をつくる授業』2 ーワンダラーユウコの読書ログ #019
『英国シューマッハー校サティシュ先生の最高の人生をつくる授業』
文化人類学者で環境運動家。明治学院大学国際学部教員でもある辻新一さんが、生徒を連れてイギリスにあるサティシュ・クマールが運営する学校シューマッハ・カレッジに短期滞在し、そこで行われた授業をレポートしながら、生徒たちの変化を通して、サティシュが伝えたかったことを翻訳して紹介している本。
アートを生む3つのC
アートという言葉の本来の意味は、何かをちゃんとやる、まともにやるということ。いい仕事をすることだと言ってもいい。たとえば掃除をするときでも、上手にほうきをつかってしっかりと床をきれいにすることができたら、それはart of cleaning(掃除の芸術)だ。
そしてアートの中でも一番のアートとは art of living つまり生きるアートだ。私が君たちに「すべての人がアーティストなんだ」というとき、それは何もみんながゴッホにならなければいけないというわけじゃない。いわゆる芸術家や音楽家として生きるということでもない。
人生の中で、何をするかによらず、そのことを見事にやり遂げることこそが大切なんだ。これは、それをやることが嫌いな人には絶対にできないことだろうね。でも、誰もが例外なく、何かを見事に美しくやり遂げる才能を持っているんだ。
アートの定義 3C
Commit 献身的に関わること
Care 思いやりをもって世話をすること
Continuie 続けていくこと
インスタントに得られる成功は、インスタントに弾ける幻想でしかない。そうではなく、3つのCを忘れずに、辛抱強くひとつのことに打ち込んでほしい。そうすればいつか、それまで眠っていた自分の中のアーティストが目を覚ますんだ。次々と新しい自分が発見されるだろう。そして君たちは次々に良い仕事をして活躍するだろう。
P170〜173 アートを生む3つのCより
これは本当に耳が痛い言葉で、煩悩の塊で堪え性のないわたしからしたら、辛抱強く欲をかかずにひとつのことに打ち込めと言われると、「ほんとすみません」と謝りたくなるんだけれども。
でも、だとしても、自分なりに無理のないやり方とレベルで、このことを意識し続けることはとても大事なこと。今すぐバラ色の人生に変わりたいという邪心につけ込む、ニセスピリチュアルマインドにも気をつけて、心しておきたいと思う。
新しい文化のお手本になるには
Q(有名になってコンクリートの建物が増えゴミも多くなった古い旅館)観光やツーリズムというものに嫌な印象を持つようになってしまいました。景観を壊さず、自然や文化を大切にするツーリズムはないのでしょうか?
A (サティシュの答え)では、君の祖父母の旅館にこんな看板を出してはどうだろうか。「巡礼者歓迎、観光客お断り」
巡礼者と観光客はどう違うか。巡礼者は、自分が訪れた場所を尊敬し、祝福する。決してその場所に対して破壊的な行為をすることはないんだ。訪れた場所に自分が合わせるということだね。逆に観光客は、訪れた場所のほうが自分に合わせることを要求する。どこに行っても、普段の生活と同じような便利さを求め、自分勝手にふるまう。
P190
世の中には単なる観光客であることにうんざりしていて、巡礼者として旅をしたい人たちがたくさんいるんだ。でも残念ながら、多くのホテルや旅館は人々を観光客としてしか扱っていない。だから、観光客として扱われたくない人たちのための旅館が必要とされているんだ。それは、ビジネスとしても立派に成功するだろう。
その旅館の成功例が、他の旅館やホテルのモデルになる。そうやって、巡礼者の文化がつくられていく、というわけだ。
P188 6日目 悲しみの手当て
新しい文化のお手本になるには より
このくだりは、書籍のメインテーマからは少し外れる話題ではあるけれど、わたしの中では一番ヒットしたくだりだった。おじいちゃんの代からやっていた古い旅館が、話題になって人がたくさん訪れるようになったけれど、逆にいろいろ駄目になってしまって、おじいちゃんは疲れてしまってがっかりして閉館してしまう、どうしたらいい?という大学生の質問に対するサティシュの答え。
巡礼者と観光客、というカテゴライズがすごく新鮮だったので紹介した。ちょうど最近NHKBSで、スペインの巡礼路サンティアゴ・デ・コンポステーラを旅するドキュメンタリーをたまたま見ていて、この地を歩いて訪れる(全長800kmにも及ぶ)人が、年間10万人を超えているのを知った。しかもそれは世界遺産登録ということも相まると思うけれども、こんなに増えたのはここ50年くらいのことだということも。
「トランジション・タウン」という試み
トランジション・タウン運動(イギリス・トトネスから始まったムーブメント)ベン・ブラングウィンの言葉
トランジション・タウンは、2005年にここトトネスで、現代社会のふたつの大きな危機を背景に生まれた。そのふたつとは気候変動とピークオイルだ。これらの危機の根源にはエネルギー問題がある。20世紀のような石油を土台にした世界は、今大きな変革を迫られている。
21世紀は、石油枯渇の時代なんだ。エネルギーは減っていくし、減らさざるを得ない。しかし、これまでの私たちの知性や創造性というものは、エネルギーが増加し続ける状況の中で花開いたものだ。それなら、今度は、エネルギーが縮小していく状況に合わせて、知性や創造性を花開かせるやり方を見つけようじゃないか。それがトランジションタウン運動の挑戦だ。
P198〜「トランジション・タウン」という試みより
トランジションタウンについては、以前住んでいた海辺の街で取り組んでいる仲間もいて、名前と概要だけは知っているレベル。イギリスで始まった運動というのは知らなかった。持続可能性を考えながら生きる、というところに以前から共感も多かったけれど、新型コロナウイルスが引き起こした、今のこの状況下で読むと、よりそのことがリアルに心に迫るものとして感じることができた。
まとめ感想
サティシュ・クマールが最近寄稿した(新型コロナウィルスは地球からの声。思想家、サティシュ・クマールは語る。「この危機から私たちは何を学べるのか?」)
という提言は、彼の思想を知ってから改めて読むとより迫るものがある。人生そんなきれいごとじゃない、とか、そうはいっても理想論、みたいな周囲の声、自分の内側から否定したくなる声もある。
でも、それはきっと「キレイゴトで生きていくのは困難」という過去の自分の歴史から生まれて植え付けられた信念から出てきたもの。そのことを受け入れながら、傷ついた過去の自分を癒やしつつハートの声に従って、少しずつでも動いていければいいなと思う。
おまけ 写真について
ちなみにこの3回シリーズで差し込んだ写真は、2017年冬に訪れたモロッコの写真です。旅の記録もこのときのはまとめているので、興味が湧いた人はぜひ読んでみてください(長いよ)。
モロッコ女子ひとり旅 ーマラケシュ・モザイクデザイントラベル
このとき行けなかったモロッコ北部や、文中に出てきたスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラは一度行ってみたいところだけれど、日本を出て自由な気持ちで旅ができるのは、まだまだだいぶ先のことだろうなあ…。
このモロッコ旅を皮切りにここ3年くらい「行けるときに行っとけ」って気分で、世界中あちこち巡ったけれど、今となれば本当に正解だった。まさかこんな時代があっけなくやってくるとは思わなかった。今、自分の中ではそんなに旅したい!!という飢餓感はないんだけれど、それはここ数年「行けるだけ行く」方針で、ある程度満足しているという状況もあるのかもしれない。